匠の相駕籠

ソフトウェア開発会社の日常とオピニオン - メメントモリ公式ブログ

営業という仕事はなんだろうか?

私はプログラマーとして仕事をはじめてから、作ることを一筋にやって来た。

25歳のときに会社を辞めて、

フリーランスとして食っていかなければならなくなった。

 

 

フリーランスとして一番最初にぶつかった壁は、

営業という仕事だった。

自分という商品を買ってもらうためには、

人にそれを知ってもらわなければならない。

 

それまで作ることだけしか考えてこなかった私には、

営業という仕事が何をするものか、

まったく想像ができなかった。

 

今日でこそ、どのような仕事かちょっとは意識しているつもりだが、 

優れたセールスマンはどのようなものか、

答えは見えない...。

 

 

ある日、身近なところでヒントを見つけた。

 

私はファッションなどにほとんど関心がなくて、

清潔で、人が不快にならなければそれでいいじゃないか

程度に考えている。

 

最近通い始めた理容室で、散髪していたときのこと。

私とほとんど同い年の彼はこういった。

 

「男は30歳を過ぎると、

 人に見られる機会が増えてきます。

 いつも気にする必要もありませんが、

 大切なシーンでは、

 もっと身だしなみに気をつけられたらいかがですか?」

 

なかなか率直に言う人だなと思ったが、

それもそうだなと思い、

ヘアワックスを買ってみたりした。

 

ヘアワックスを買ったのなんて、

何年ぶりだろうか!?

 

 

私は、このとき、

「営業」の仕事とはこういうことではないかと感じた。

この理容師は、

美容に興味のない私に、ヘアワックスを買わせてみせたのだ。

 

これは一体どういうカラクリか?

人を動かす力とはどこから来ているのか、

考えていた。

 

 

私の話に戻るが、

私の営業スタイルというのは貧相で、ひとつしかない。

それは、実直であることだ。

 

正直これだけでは、いままで上手くいかなかった。

 

例えば、最近あるお客さんと話していたときのこと。

そのお客さんは自分たちの仕事のために、

あるソフトウェアシステムを作ろうとしていた。

私は開発のプロとして意見を求められた。

 

私は淡々と、ソフトウェアを作ることの「リスク」を語った。

  • ソフトウェア開発は、膨大なお金がかかること
  • 維持にもお金がかかること
  • いま欲しいと言っているものは、本当に必要か?
  • 違う方法もあるのでは?

そして、もちろんシステムを作ることの良い面も話す。

 

私は、ソフトウェアを作ることの良いところと悪いところを

知ってもらった上で、

冷静に判断してもらいたい。

そんな思いが、私の誠実さだった。

 

しかし人はリスクを認識すると、行動が止まる。

ビジネスとしては、そこから何か商談が決まることはなかった。

こういうことをしばらく続けてきて、

これはなにかおかしいのではないかと思うことが多かった。

 

 

私の行動は、人の行動を止めている。

しかし営業とは、人を動かすことだろう。

もちろん、騙してものを買わせれば良いわけではないから、

そのバランスは非常に難しい。

 

 

私が理容師からヘアワックスを買ってしまった、

その理由はなんだろうか。

私はいくつか気がついたポイントがある。

 

ひとつは、私が心の底からヘアワックスを必要としていたか?

それは違う。

私は理容室にいくことで、

もっと身だしなみに気をつけなければいけないという

気になったのだ。

 

人を動かす側にとっては、

その人が本当にそれを欲しがっているかどうかは、

あまり重要ではないということになる。

 

 

そしてもうひとつは、

理容師は私の前に、私自身がよく見える鏡を

置いたのではないかと思う。

 

あなたは、いまこういう姿をしているけど、

それについてどう思いますか?

と、問いかける。

 

それによって、

もっとこうしたいなという、

私の自発的な心を引き出したのだと思う。

 

 

私は理容師の仕事を見た。

そして、私は営業には

「相手が本当にそれを必要としているかどうかは、あまり重要ではなく」

「自分のことを客観的に認識させること」が

核心ではないかと思った。

 

皆さんはどう思うだろう。