匠の相駕籠

ソフトウェア開発会社の日常とオピニオン - メメントモリ公式ブログ

向上心のある技術者が不幸になる環境

私の近くで仕事の引き継ぎをしている人がいて、その人たちの会話に耳を傾けていた。

あるプロジェクトの開発を、

丸ごと他社に引き継いでいるようだった。

 

引き継ぎを担当している人が、

ソフトウェア開発で有用なツールについて熱弁していた。

ちょっと高価なツールなのですが、

使うことでとても効率があがります!

実際に私たちも、ほとんどみんながそれを使っています。

御社でも是非使ってみてください!

(※ 私は自腹で買ってます!)

 

引き継ぎを受けている会社の担当者(技術者)がこういった。

なるほど... 知りませんでした。

しかし、有料だと難しいです。

引き継ぎを考えると、

弊社の誰でも使える必要があるので...。

一応、社内で検討いたします。

 

この話を聞いていて、

この2人は話をしている「視点」が違うなと思った。

 

前者の引き継ぎをしている技術者は、

仕事が好きで、純粋に開発する上での良し悪しに立っている。

 

後者の引き継ぎを受けている技術者は、

このプロジェクトを会社のビジネスの一環としてだけ見ている。

 

開発の効率が良いとか、

作っていて楽しいとか、そういうのは重要ではなくて、

ビジネスとして引き継ぎが無難にできれば、

それで良いのだ。

彼らにも抱えている従業員がいて、

従業員にちゃんと給料を出さないといけない。

 

ソフトウェア開発を単純なビジネスとしてだけ考えていると、

その会社は2つの特性を持つことになると思う。

 

ひとつは「良い製品」を自分たちで生み出すのが難しくなる。

 

ソフトウェア開発の本質は「デザイン」だとよく言われていて、

つまり誰もが「良い製品」を作れるわけではないということだ。

「デザイン」はどうしても人の能力に依存する。

 

もうひとつの特性は、

良いものを作ることを目的に出来ない以上、

(言い方が悪いが)誰でもできるような仕事を取ってきて、

できるだけ低コストにそれをこなすことに目が行くようになる。

 

このビジネスが悪いとは言わない。

 

しかし最悪なのは、この特性を理解していないまま

ビジネスをしている場合だと思う。

 

つまり低コストに、誰でもやれるような仕事ばかりしているのに、

「良い製品」を作ることを会社の使命に掲げている。

これは自分たちのやっていることを理解していない。

 

 

何が書きたかったというと、

いちおう私はソフトウェア開発者の端くれだけども、

「良い製品」を作ることを目的にしていないソフトウェア企業では、

向上心のある技術者は不幸になるので、

辞めたほうが良いと思った。