匠の相駕籠

ソフトウェア開発者の日常とオピニオン - メメントモリ公式ブログ『匠の相駕籠(たくみのあいかご)』

『小倉昌男 祈りと経営』を読んだ

 『小倉昌男 祈りと経営』という本を読んだ。故 小倉昌男さんは、クロネコヤマトの宅急便でお馴染みの、ヤマト運輸の代表取締役などを務めてこられ、日本で「宅急便」を発明し、その巨大市場を生み出した人でもある。

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 わたしは小倉さんのことを何も知らなかったのだけど、先日ネットラジオでこの『小倉昌男 祈りと経営』が紹介されていた。「宅急便」を発明した傑出した実業家であり、退任後は私財24億円を投じて、ヤマト福祉財団を設立し、福祉分野や障害者の就労支援などに乗り出した。しかし一方で、じつは小倉さんの家庭は非常に混乱した状態にあった..。

 

 この本は小倉昌男さんの、老年期のプライベートの部分に焦点があたっているということで、興味を惹かれた。

 

 『小倉昌男 祈りと経営』の著者、森健さんは、小倉さんの関係者や親族から、熱心で緻密な取材を重ねて、その非常にデリケートな領域に踏み込み、人物像や、それを理解するために避けては通れない、家庭環境などを明らかにしていく。

 

 

 わたしが印象に残ったエピソードを2つほど。

 

 

 一つは、小倉さんが妻を亡くしたときに、その葬儀で懺悔したことだ。小倉さんには長女、長男がいるのだが、長女は黒人のアメリカ人と結婚した。小倉さん自身、差別を憎み、差別をしないと公言していたにもかかわらず、いざ自分の娘が黒人のフィアンセをつれてきたときに、非常に動揺し、そして認めてあげることができなかったと語った。

 

 一つは、小倉さんが妻を亡くしたあとで、その後の人生をいっとき支えていたある女性の姿があった。小倉さんとその女性は、心を深く通じ合わせたのだけど、小倉さんの死の間際、その女性は小倉さんの死を看取ることを拒否する。それを小倉さんは病室で黙って聞いていた。

 

 なかなか人生の深さを感じさせる話が多かった。この本は最後は救いで終わるので、読んだあとの気持ちは清々しい。しかし、人とはなんと深くて、悲しくて、思ったとおりには扱えぬ、困難なものなのだろうなとおもった。