匠の相駕籠

ソフトウェア開発者の日常とオピニオン - メメントモリ公式ブログ『匠の相駕籠(たくみのあいかご)』

『森のなかの海』について

 作家、宮本輝さんの『森のなかの海』を読んだ。

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 じつはこの本、4、5回ほど読み返している本で、いちばん最初に手にとったのは高校のときの図書館だったと思う。当時、小説を読むという習慣はほとんどなかったのだけど、引き込まれるようにしてあっという間に読んでしまった記憶がある。

 

 宮本輝さんの本は、わたしの肌にあっていたようで、その後、宮本輝さんの書いた小説は片っ端から読んでいった。

 

 

 そんな思い出深い本なのだけど、内容をほとんど忘れてしまっていて、なんとなく本棚で目についたので、ひさしぶりに手にとってみることにした。(ちなみにわたしは、小説や映画などの内容を記憶しておくのが苦手で、どんな内容のものでも、日にちが経つと、ほとんど忘れてしまうのです。)

 

 

 平成7年の阪神・淡路大震災から物語ははじまる。物語の主人公は、二児の母で36歳、希美子。神戸で被災した希美子は、地震から逃げるようにして東京の実家に身を寄せる。そのさなかに、夫の不倫が発覚して離婚。二人の子どもを連れて、ひょんなきっかけから譲り受けることになった、岐阜県の奥飛騨にある森のなかの山荘で暮らしはじめる。

 神戸で親交があったご近所さんが、まだ小学生ぐらいの3姉妹だけを残して、全員死んでしまったことを知り、その3姉妹を山荘で引き取ることを決める。そのうちに、被災して家を失った他の子どもたちも、ここを頼りにやってくる。

 

 思わず大所帯となった奥飛騨の山荘で、森のなかの生活を続けながら、また人との交流によって、震災によって傷ついた子どもたちの心が癒やされていく様子が描かれている。そして希美子の心も、この生活の中で癒やされていくのだ。

 

 小説の最後で、希美子のセリフ。

 

 わたしの人生の本番はまだ始まっていない...。

 

 

 私が高校生のときにこの本を読んだと言ったけど、その当時は希美子さん36歳ということで、けっこう(言い方が悪いですが)オバサンなんだなと思っていたような気がする。でも、いま読んでみると、ほとんど私と同年代になっていた。同じくらいの歳になってみると、全然まだ若いなと思ってしまう。

 30代というのは、なってみてわかったけど、すごく若い。未熟という意味で。わからないことだらけだし、できないことだらけの年頃だ。

 

 

 わたしはITという仕事柄か、30代や40代の年頃のひととの付き合いが多い。そんな狭い世界の中から、世の中を見てしまっているけど、30代や40代ってまだまだコドモじゃないか。

 成長しなければ、そのまま未熟な50歳や60歳になってしまう人だっている。

 

 『森のなかの海』では、とても知的な60歳や70歳の爺さん婆さんが登場する。かくしゃくとして、その歳になっても何かを学び続けている人というのは、とても魅力にあふれている。

 

 この本を読んでいて、すごく知性に憧れた。

 知性というのは時間をかけて、努力して磨かれていくものだろう。それに憧れて、そこに近づいてみたいと思えるのは、大事なことなんじゃないかなと思う。