匠の相駕籠

ソフトウェア開発者の日常 - メメントモリ公式ブログ『匠の相駕籠(たくみのあいかご)』

これからの新しい仕事

 人と人が協力して、同じ方向へすすんだり、ものづくりに取り組んだりするのは、複雑で難しいなと思う。

 

 学校に通っていた頃に、残念ながら、わたしはこういった経験や勉強をできなかった。人と一緒に仕事するということに、真剣に向き合えるようになったのは、やはり社会人になってからだと思う。

 

 社会人になって、ようやく10年ほど。うまいやり方については、いまだに悩むし、日々工夫を加えている。

 

 

 なぜ人と一緒に仕事することにこだわっているのかというと、この世の中を、どこをどう見渡してみても、たったひとりの人間だけで作り上げたものは存在しないからだ。

 自分と他人の関係の中から生み出されてくるものだったり、たとえば建築物など、物理的にひとりでは作れないものもある。わたしの仕事であるソフトウェア開発についてもそうだ、ひとりで作れるソフトウェアはほとんど無い。

 

 

 例えばソフトウェア開発について、非常に能力のあるエンジニアが集まっているにも関わらず、何も生み出せないということがある。力が空転して、スケジュールは遅延していく。お金を惜しまずに、力のある個人を、次々にプロジェクトへ投入していくが、状況は一向にかわらない。

 

 大きな会社であっても、小さな会社であっても、変わらない、似たような悩みを抱えている。

 

 

 人と一緒に仕事をするときは、この力の空転について真剣に考えなければいけない。

 

 

 もう一つ注意しなければいけない思うのは、バラバラの意思決定だ。

 バラバラの意思決定とは、つまり「船頭多くして船山に登る」という状態のことで、これも一緒にやる人間が増えるほどに、複雑に、難しくなっていく。

 

 バラバラの意思決定については、間違った解決方法が横行している。上司が部下に対して恫喝や脅しに近い行為で無理やり従わせるという方法。それと、ある意味似たようなものだが、賢いのは一人だけで、その他のプレイヤーはただリーダーの言うことに黙って従えというやつだ。

 

 これが間違っている理由は、ソフトウェア開発においては、その問題について一番情報を持っていて、正確な判断が下せる可能性が高いのは、その問題に取り組んでいるプレイヤー(ソフトウェアエンジニア)だからだ。

 

 とても複雑で規模の大きい集団作業というのは、そうなりやすい。大量の情報を、たった一人のリーダーが正確に操ることは不可能なのだ。個別の判断は、現場が臨機応変にやらなければ、うまくいかない。

 

 

 力の空転の問題、そしてバラバラの意思決定。これについてはいろいろなプロジェクトで起きていて、うまくコントロールされている現場は、わたしは見たことがない。

 

 うまくやることが難しいというのはあると思うけど、わたしはこれが困難な理由のひとつを最近知った気がする。TOC (Theory of Constraints) について学ぶ必要があるが、部分最適化と全体最適化の利害は衝突するため、部分最適化をいくら突き詰めても、人々が一緒に仕事をすることを円滑にする役には立たないと言うことだと思う。

 

 

 力のあるエンジニアが集まっているのに、前に進まない。毎日のように残業して、必死でコードを書き続けるけど、いつになったら終わるのか見当がつかない。こんな状態が続くと、ソフトウェアエンジニアの目は死んでいく。

 

 

 わたしはそんなことで、もうこれ以上、人生の時間を無駄にしたくないと心底思うようになった。だから、わたしがこれから取り組むべき仕事が見つかった。前々から似たようなことは考え続けていたけど、はっきりと言葉に変わったのは、いまだと思う。

 

 わたしのこれからの仕事は、ソフトウェアのチームが、きちんと前に進めるようにすることだ。端的にいうと、プロジェクトを成功させる、だ。

 

 

 

 もうひとつ。長い間、わたしに解けない問題があった。

 

 私は小学生の頃からの夢はゲームクリエイターになることだった。中学、高校とその夢を保ち続けて、なんとか二十歳のころには、とあるゲーム開発企業に就職できた。夢に見続けたその仕事に、ちゃんと就けたのだ!

 しかし5年ほどして、その会社は辞めてしまった。

 

 わたしは色んな人から、なんで辞めたの?と聞かれたけど、聞かれるたびに微妙に違う答え方をしていたような気がする。なんでかっていうと、わたし自身も、なんでそこまで取り憑かれていた夢を諦めてしまったのか、分かっていなかったからだ。

 

 その答えが、ようやくはっきりとわかった。

 

 わたしはゲーム会社の中で、チーム開発の難しさという問題に直面して、その解決方法がどうしてもわからなかったのだ。ゲームというのは、作る人だけでも50人や100人もの人間が関わる。その中で、うまく結果をだす方法が、まったく見当がつかなくて、絶望してしまったのだ。そしてデスマーチにも疲れてしまい、逃げ出したのだった。

 

 

 いまは、答えはわかった。その解き方は、見えつつあるような気もするけど、実際に取り組んでみないとはっきりしないことも多いと思う。まあ、これからいろいろやってみようと思います。